■ジローの思い出■

 コラムの「キカイダー好き・・」の項でも書いたのだが、その昔、業務の都合で自分はキカイダーのジローの格好をしたことがある。と言ってもそんな大層な衣装を着たわけではなく、フツーの服装をそれらしく見せただけの格好なのだが。それでも頭にサンブラス、ブルーのGジャン上下にウクレレを背負い込み、寒くもないのに黒い手袋している姿は常人を逸した相当やばいスタイルだった事に変わりない。
これは、そんな怪しい身なりをした自分が社屋の外で一人仕事に励んでいた時の話だ。

 その日は少し涼しかったかもしれない。通りの向こうから歩いてきたお爺さんの様子が少し妙な気がして、自分は遠巻きに通り過ぎていく姿を眺めていた。するとお爺さん、やはりというか急にその場に崩れるように行き倒れてしまったではないか。
  「大丈夫ですか!?」
慌てて駆け寄り、お爺さんを背中から支え起こす自分。だが爺さん普段何食ってんだか、ずいぶん重い。
そこへ大学生風の若者数名が通りがかったのを幸い、助っ人にしようとこれにも声を掛ける。
  「ちょっと手を貸してください!」
見知らぬ変人からの突然の要請に一瞬目を点にしながらも展開されている状況を把握したのか、若者達はすぐに手を貸してくれた。心臓発作か貧血か、すぐにでも救急車を手配しようか、だが同乗はできないな…
だが、お爺さん。こちらの手を軽くさえぎると『大丈夫、なんでもない』と言いたげな手振りで愛想を浮かべて
よっこらしょと立ち上がると、またてくてくと通りの向こうへ自力で歩いて去っていってしまった。

どうやら大丈夫そうらしい。いったい何だったんだ、お爺さん?
  「ありがとうございました」
若者達にひとこと言って、自分はまた業務に戻る。何だか狐につままれた様な顔をして、若者達もその場を後に去って行った。まぁ何にせよ大事にならずに済んで良かったではないか。
それからしばらくして無事に外での業務時間を終え、自分は社屋に戻った。そして、今しがた外で起こった出来事を同僚に簡単に話し、じゃあ取りあえず着替えを・・と思い立ってからフト気付いたのだ。

  ぐはっ!? 今ジローの格好してたんだっけ

すっかり忘れていた!
社屋前ならまだしも、爺さんを助け起こすのに人通りの真ん中まで出張ってしまった。
頭にサングラス、Gジャン上下と背中にはウクレレ、黒い手袋をした人間は通常社会ではあまりにも怪しい。
どうりで爺さんや若者ら通行人の自分を見る態度が妙によそよそしかったわけだ。よりによって、なんでそんな格好してる時に事件に遭遇するのか。それともそんな格好してたから遭遇したのか!?
 その後、お爺さんがどうなったかは自分の知るところではない。

・・・まるでネタのようだけど、これは実際にあった本当の話。


2004.5.18 Masked_Rider