昭和40年代といえば、TVで特撮変身ヒーローやスーパーロボットアニメが続々と誕生した時代だった。 自分は丁度そのTVヒーロー番組黄金期の半ばから後半を体感した世代の一人。時の主役は巨大ヒーローから等身ヒーローへと人気が移行しつつあった。 日本中が“仮面ライダーブーム”の渦の中、憧れのアイテム『ライダー変身ベルト(電池式)』を持っているのは近所でも金持ちの子か親に大事にされてる一人っ子ぐらいなものだった。ほとんどのビンボーな庶民の子は、主に拾ったダンボール紙なんかを切りぬいてライダーベルトを作ったのである。当時はオモチャを買ってもらえるという事は特別な事だったのだ。 そんなビンボーな子供たちが狭い路地に集まり、『ライダーごっこ』は始まる。 さて、誰が仮面ライダー役をやるのか? これはもうどこの地でも大概は“ケンカの強いヤツ”のものだ。つまりグループ内で最も権力を有する暴れん坊の特権だ。グループ内権力が平均化してる場合は、ジャンケンが行われる。そして権力が複数に分散している時は、Wライダーや3人ライダーものにキャスティングは変更されるのだ! まずはライダー役が決まり、続いて敵の幹部怪人役。ここで問題になるのは、果たして誰がライダーマンをやるのか?ということだ。 ボクはイヤだ! 俺だってイヤだ! あたしもゼッタイいや! ライダーマンやるくらいなら戦闘員がいい! 人質役やるから、ライダーマンはやめさせて! 結局、仲間内で一番貧弱なヤツがライダーマン役をするのがオチなのだ。案のじょう、弱い。 たまにイイ気になった怪人役がライダーマン役をコテンパンに(死語)ヤッてしまい、哀れライダーマンは泣きながら自分の家に途中退場する場合もある。しかしライダーマンの真の悲しさは、この後も彼の役柄存在が無くなっても遊びの進行に全く影響を及ぼすことなく遊びが継続されていくことにあった。 なんだ、いなくてもイイんじゃんライダーマン。 やがて時が経ち、等身ヒーローブームの頂点はライダーからゴレンジャーへと移っていった。 当時は『ゴレンジャーコーン』なるお菓子も発売され、自分も駄菓子屋の店先で赤い袋と青い袋どちらのパッケージを選ぶか迷ったのを良く覚えている。中身は全く同じなのだが・・。結局、アオレンジャーよりもアカレンジャーの方が少し好きだったので、赤い袋の方を買って帰った。当時の子供にはちょっと高級な50円もした。 5人が主役という斬新な設定 それまでには無かったコミカルな演出 子供たちはこぞって5人のうち誰が一番良いかを言い合った。一番人気はアカとアオで2分されキレンジャーは当然のように嫌がられた。 『ゴレンジャーごっこ』では、少しでも太っている子は否応なしにキレンジャー役を任命されるのだ。それはもう無言の圧力に近かった。そして痩せた弱っちい男の子がモモレンジャーをやってたりする。それならと少し太めの女の子が「私にモモやらせて!」などと言おうものなら「おまえはキレンジャーじゃ!カレー食っとけ!」とアカ役から罵声が飛ぶ。こうなるともう男も女も関係無い。子供たちには、「キレンジャー=太っている」という図式を守ることこそが大事なのだ。 以前務めていた会社の同僚で、子供のころ「大好きなカレーが食べられるから」という理由でキレンジャー役を自ら申し出たというS君が居た。しかし彼は「オマエは痩せているからアカン」と、いつもアオやミドしかやらせてもらえなかったそうだ。そういや彼は毎日昼食はカレー屋へ通っていたっけ。 キレンジャーをやりたいという奇特な心の持ち主がいても、痩せてる人間には任せられないこのキレンジャーという役柄。ひょっとして、みな子供心に5人を役柄に位置付ける時の肝心要になるのがこのキレンジャー役だという事を無意識的に感じ取っているからなのか。 そう考えると、『ゴレンジャーごっこ』のキレンジャー役はまさに最も大役だったのかもしれない。 ライダーマンにしても、キレンジャーにしても。 子供の頃イヤだったキャラクターって、大人になってから存在の尊さをかみしめるものなんだなぁ。 |